あらすじ
「聖女を突き落としたのはこの女です! 第三の鐘の刻に、この目で見ました!」
申し上げにくいのですが、その日、鐘は鳴っておりません。年に一度の刻止めで、大時計はわたくしが止めておりましたので。ですからその時刻は、この国に存在いたしません。
ついでに申し上げますと、そのあいだわたくしは宰相閣下と、鍵のかかった執務室に二人きりでおりました。規則でございます。ええ、規則です。
——三年前から同じ方に求婚され、三年とも「その刻は存在いたしませんので」とお断りしてまいりましたが、本日は鐘が鳴っております。