あらすじ
「人形のような妻だ」——離縁状に署名しながら、夫はそう言いました。
この国の縁組は、本人より先に「見合い人形」が会います。相手の家へ贈るその人形を、
公爵家では三年半、わたしが彫っていました。もちろん、わたしの名前は入っていません。
離縁されたわたしは、母の残した工房に戻りました。持って出たのは道具箱ひとつ。
そして、母に教わったとおりに彫りはじめます。——盛らずに。
本当の顔を彫った人形は、縁談を壊します。けれど壊れるのは、壊れて正しかった縁談だけ。
やがて灰通りの小さな工房に人が並びはじめ、その頃、公爵家が贈った人形が、
顔合わせの卓の上で音もなく割れました。盛った人形は、必ず割れるのです。
そうして王都は、ひとつのことを言いはじめます。
——では、この三年半、あの家の人形を彫っていたのは、誰なのか。
わたしは何も申しません。人形は嘘をつきませんから。嘘をつくのは、彫る人だけです。
静かなスカッと・遠景ざまぁ・職人ヒロインがお好きな方へ。
主人公は言い返しませんし、復讐もしません。恋愛は第1部ではゆっくりです。
ハッピーエンド保証。