あらすじ
「真実の愛と結婚する」と王太子殿下が仰ったので、七年ぶん作ってきた結婚式を、全部お返ししました。
客名簿、衣装の寸法、料理の献立、警備の配置、外交席次。大聖堂の予約も、白薔薇一二〇〇本の手配も、すべてわたくしの手の中にありました。ですから、すべて卓の上に置いてまいりました。厚みは指四本ぶんです。
隣国カルヴァンで、わたくしは花嫁専門の祝宴師になりました。望まない結婚をする娘たちの式を、式次第のたった一点だけ変えて、その日を彼女のものにする仕事です。靴を一足。署名欄を一行。席をひとつ。それだけで、人の一日は変わります。
一方その頃、王都では——大聖堂に、二組の婚礼が同じ日に組まれていたそうでございます。
わたくしは、何も申し上げておりません。控えを、置いてまいりましただけでございます。
声を荒げない主人公と、静かに詰んでいく相手が好きな方へ。
※恋愛は中盤から静かに始まります。派手な反撃・魔法での逆転はありません。