あらすじ
婚約者の腕には、いつも別の人の手がある。
幼馴染だから仕方がない、と彼は言う。
悪気はないのだそうだ。
誰も嘘をついていない。
それが、一番厄介だった。
子爵令嬢のレミィは、腹を立てるのが下手だ。
何かあると、まず手帳に日付と数を書く。
姉が家を出た日から、そういう子になった。
やがてレミィは、ひとつの匂いに気づく。
そこにあってはいけない匂いだった。
けれど、それは罪ではない。
法にも礼にも触れない。
ただ、貴族の世界では致命的になる。
レミィは誰も責めない。
声も上げない。
数えて、書いて、裏を取る。
彼女が数えたのは、罪ではないことばかりだった。
その手帳を、彼女はいつ開くのか。