あらすじ
「――て!」
ある日の昼前、とあるアパートの一階の一室で男は目を覚ました。
まぶたを薄く開け、熱のこもった掛け布団を足で押しやって身じろぎする。ここ最近はすっかり暖かくなっていた。朝、目覚ましを止めた記憶はかすかに残っていたが、そのあと二度寝してしまったのだろう。
休日とはいえいかんな――そう思いつつも、窓から流れ込むやわらかな風が肌を撫でると、男は頬を緩めた。鳥の鳴き声が聞こえ、昼前らしい穏やかな空気が部屋を静かに満たしていた。
「さっさ――いて!」
男は再びまぶたを閉じ、ぼりぼりと頭を掻いた。それから眉をひそめた。