あらすじ

ひばり銀座商店街のいちばん端にある小さな定食屋「つくも食堂」。昼は六百円の日替わり定食が評判の、どこにでもある店だ。……ただし、金曜日だけは別。夜十一時になると、一度しまった暖簾を、もう一度だけ店先に出す。  小学六年生の九十九一(つくも・はじめ)は、その理由を知らずに育った。父さんに聞いても「酔っぱらい相手の商売さ」とはぐらかされるだけ。けれど四月のある金曜日、父さんが高熱で倒れ、はじめは生まれて初めて「店番」を任される。  夜十一時。ひとりでに開いた引き戸から入ってきたのは——額の真ん中に大きな目がひとつだけある、小さな子ども……妖怪でした。  つくも食堂の夜のお客は、妖怪。人の心に溜まった「灰汁《あく》」——妬みや不安や悲しみ——を食べて生きる、町の掃除屋たちだ。でも、灰汁を食べすぎた妖怪は、お腹が重くなって動けなくなる。それを料理で抜いてやるのが、八百年続く九十九家の仕事だった。  ご飯を残す親友と、すねこすり。  運動会の「十四秒二」と、かまいたち。  転校する友だちと、雨降り小僧。  そして終業式の夜、店の前にできた妖怪の大行列と、九十九帳のどこにも載っていない「ナニカ」。  代々の記録・九十九帳を頼りに、はじめは幼なじみの葵と一緒に、今夜も厨房に立つ。妖怪の顔色を見て、献立を考える。灰汁を抜いても、悲しいことは消えない。それでも——「持ちやすくしてやること」は、できるから。  おいしくて、ちょっとふしぎで、最後にあったかい。妖怪専門・深夜だけの食堂の、ひと学期の物語。読み終わるころ、「九十九」に「一」を足すと何になるか、きっと確かめたくなります。

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エブリスタ
エブリスタ2026/07/29
  • 現在の作品金曜深夜のつくも食堂 〜今夜のお客は、妖怪です〜