あらすじ
灰島冴は、加害者側の示談を専門にしていた元弁護士だ。金銭と引き換えに「この件について口外しない」と約束させる条項を書き、八年間で六十七件の事件を、なかったことにした。
資格を返した今の仕事は、聞き書き。語れなくなった人の話を聞いて、記録に残すだけの商売だ。裁判にも新聞にも出ない、誰も裁けない記録。
ある日、七年前に自分が黙らせた女性が訪ねてくる。条項を外したい。加害者がテレビで褒められているのを、黙って見ていたくない——。
交渉の席についたその時刻、加害者は殺された。彼女には完璧なアリバイがある。証人は、同じ部屋にいた灰島自身だ。それなのに彼女は警察へ行き、私が殺しました、と言った。
やがて事務所に、番号だけを印字した白い封筒が届く。〇一/六七。
黙らせた罪は消えない。誰かが、六十七枚を数えはじめている。
法で裁けない罪を執行する者と、罰にならない記録を残す者。二つの正義がぶつかる社会派サスペンス。毎日20時更新。