あらすじ
伯爵夫人エルナは、十五年間にわたり屋敷の家計と領地経営を支えてきた。それでも夫レイモンドは、彼女を「自分では一枚の銅貨も稼げない役立たず」と見下し、若い男爵令嬢と再婚するため、一方的に離縁を言い渡す。
しかし、エルナは泣いてすがらなかった。
夫の機嫌ひとつで失われる暮らしを、安定とは呼べない。そう気づいた彼女は、何年も前から地下室で錬金術を学び、正体を隠して「アフェクタ商会」を経営していたのだ。
エルナが築いたのは、薬や人工宝石を作って得る収入と、製法を各地の工房へ貸し出して得る収入。たとえ自分が働けない日でも、もう一つの稼ぎ口が暮らしを支えてくれる。
四つの鞄だけを持って伯爵伯家を去ったエルナは、ついに商会主として表舞台へ立つ。一方、彼女を追い出したクロフォード家では、家計も領地経営もたちまち行き詰まっていく。
やがて借金に追われたレイモンドが救いを求めて訪れた巨大商会。その会頭席に座っていたのは、かつて彼が「何も生み出さない」と捨てた元妻だった。
これは、誰かに養われるだけの人生を拒んだ冷遇妻が、二つの稼ぎ口を武器に自由をつかみ、王都一の商会主へ成り上がる物語。