あらすじ
僕と妹は、姫さまの乳兄弟。
僕らの母上が姫さまの乳母で、物心ついた頃から姫さまにお仕えしている。
――というのは建前で、姫さまは実の妹と同じくらい可愛い。
姫さまは、母上の影を追いかけている。
妹は、姫さまに死ぬまで尽くすつもりだ。
そして僕には、隠し事が多すぎる。
後世の歴史書や絵画に描かれる英雄アルト・ド・メイエルは、髭面のたくましい将軍である。
――これが僕らしい。
ここにいる僕は、正真正銘の女なんだけど。
時は王国歴四五八年。
王は後継者を指名しないまま、急死した。
およそ百年ぶりの継承戦争。
もっとも、われらの偉大なる王家とやらも、過去の失敗から少しは学んでいた。
王位継承者をひとつの学び舎に集め、学問と政務、そして人望を競わせる。
継承権を持つ者の中から、もっとも英邁な者を次代の君主に推戴する――いにしえの時代に絶えた継承法である。
姫さまは王都へ戻り、ご自身のきょうだいや従兄弟、その他大勢の複雑な親戚たちと同じ学び舎に通う。
妹は姫さまのおそばに仕える。
僕はすこし遠くから、姫さまをお守りする。
そうして始まった平和な継承戦争は、わずか二週間で、卑劣な裏切りとともに終わった。
継承権第七位、アデライド姫が暗殺された。
あ、そういうのアリなんだ。
僕はそっちのほうが得意なんだけど。
現実と歴史叙述が侵食し合う、百合SF大河ファンタジー。