あらすじ
~登場人物の紹介とあらすじ~
【登場人物の紹介】
◆デイシー・ベルモア
王都導水局で古地図や工事記録を扱う、二十四歳の記録官。
小さな食い違いを発見する観察力に優れている一方、恋愛にはひどく鈍感。毎晩、その日に見つけた小さな幸せを帳面へ一行だけ記している。
新任監督官ルアンが、ほかの誰にでも笑顔を見せるのに自分へだけ笑わないため、嫌われていると思い込む。
◆ルアン・ハルディス
老朽化した第七導水路の改修を任された、二十八歳の監督官。伯爵家の次男。
貴族、職人、部下に応じて笑顔を使い分ける社交上手だが、デイシーの前では好意を隠そうとして表情も言葉も不自然になる。
相手を守りたいあまり、事情を説明せず一人で決断してしまうことがある。
◆ジーン・ロゼッタ
デイシーの同僚で、記録測量課の連絡調整係。
二人の気持ちに早くから気づいているが、無理に結びつけず、必要な場面でだけ背中を押す。
◆サンサ・ミレイ
菓子店「年輪亭」の店主。
何層もの生地を焼いた年輪菓子を恋心にたとえ、悩むデイシーへ少々大げさな助言を送る。
◆ジルオン・フェルド
王立会計院から派遣された工事監査官。
ルアンの友人だが、証拠のない便宜は認めない。導水路を巡る不正を公正に調査する。
【あらすじ】
王都導水局の記録官デイシーは、老朽化した第七導水路の改修班へ加わることになった。
指揮を執るのは、伯爵令息の新任監督官ルアン。
彼は貴族にも職人にも魅力的な笑顔を向けるのに、なぜかデイシーの前でだけ笑わない。
厳しい質問を浴びせ、仕事ぶりを細かく確認し、食事や睡眠にまで口を出してくる彼を見て、デイシーは自分が信用されていないのだと思い込む。
しかし、現地調査のために用意された大きすぎる防水靴も、机へ置かれる無記名の差し入れも、毎朝繰り返される「最近どうですか?」という質問も、すべては不器用な好意から生まれたものだった。
二人が調査を進めるなか、王都の水量記録に不自然な乱れが見つかる。
図面の改ざん、粗悪な資材、真夜中に消える水。
やがて偽造された記録によってデイシーへ不正の疑いがかかり、彼女は仕事から外されてしまう。
ルアンはデイシーの潔白を信じながらも、彼女を守ろうとして事情を語らない。
その沈黙に傷ついたデイシーは、初めて彼へ正面から怒りをぶつける。
好きな気持ちは変わらない。
仕事上の信頼も失われていない。
それでも、守る側と守られる側に分かれたままでは、二人は隣に立てない。
夕焼け色の王都で導水路を直しながら、自分の気持ちを言葉にすることを覚えていく記録官と、誰にでも笑えるのに好きな女性の前では取り繕えない監督官の、両片想いお仕事ロマンス。