あらすじ
「毒使いの令嬢との婚約は破棄する。お前の陰気な花園ごと、王家は不要だ」
王城の大広間で、王太子から一方的に婚約破棄を告げられた公爵令嬢セレナ・アッシュフィールド。だが彼女の中身は、過労で命を落とした農学部卒・元社畜の佐倉澪だった。
(婚約破棄? つまり、面倒な社交界から解放されて、一日中植物いじりしていいってこと? 最高では?)
彼女が愛してやまないのは、夕暮れに光る蝶が舞う『黄昏の花園』。人々が「毒草」と蔑むそれは、実は王都中に流通する解毒薬・治療薬の唯一の供給源。そして『聖女』を名乗る令嬢の治癒の力の正体もまた――セレナが密かに献上し続けていた秘薬だった。
その価値に誰も気づかないまま、王家は自ら花園を手放していく。
「では、失礼して。花園は私の私有地ですので、一緒に出ていかせていただきますね」
前世の農学知識と植物鑑定スキル、そして彼女にしか懐かない光る蝶たちを引き連れて、セレナは辺境の休耕地へ。三日で芽吹き、七日で花が咲く。黄昏の花園が、荒れ地に鮮やかに蘇る。
残業も終電もない、好きなものに囲まれた楽園スローライフ。けれどある日、図鑑にも前世の知識にも載っていない、黒く脈打つ謎の蕾が芽吹いて――。
手放した者たちが青ざめるのは、きっとこれから。植物大好き令嬢の、痛快で心地よい第二の人生が始まる!