あらすじ
東京の裏側は、暴力・情報・資金・武器を支配する四つの巨大カルテル〈四領域〉に分割されている。
私立高校に通う十七歳の柊蒼太は、病弱な母と中学生の妹を守りながら、目立たない日常を生きていた。
だが彼には、決して知られてはならない過去がある。
蒼太は、各国の情報機関が共同運用し、関係者ごと抹消した暗殺者育成計画〈エコー・プロトコル〉の唯一の生存者だった。
技術を使えば発見される。発見されれば、家族の暮らす街ごと消される。
だから彼は弱者を演じ、理不尽を見過ごしてきた。
――妹が、四領域の車に轢き殺されかける、その日までは。
「平穏を守るために黙ることと、恐怖に従うことは、同じじゃない」
素人の幸運にしか見えない完全な擬態戦闘。
暴力を使わず数十億円を止める心理戦。
政府すら欺く、国家公認の隠蔽官との危険な契約。
実力を明かせない最強の高校生が、東京を支配する者たちのルールを、今、壊し始める。
主な登場人物
柊 蒼太(ひいらぎ そうた)
十七歳。私立景榮学園二年生。表向きは成績も運動も中の上で、教室では目立たない少年。実際は国際極秘計画〈エコー・プロトコル〉の唯一の生存者。世界に生存を知られないため、日常では能力を徹底的に偽装している。
白金 司(しろがね つかさ)
十八歳。景榮学園生徒会長。端正で穏やかな優等生だが、その正体は政府・警察・報道機関の記録を合法と非合法の境界で処理する〈国家隠蔽室〉の執行官。兵藤ホールディングスを内部から崩すための切り札を探している。
御堂 蓮(みどう れん)
年齢・国籍・戸籍のすべてが不明。兵藤ホールディングス会長専属の運転手。冴えないスーツ姿の裏に、人間の技術体系から逸脱した戦闘能力を隠す。蒼太が初めて「勝てない」と判断する男。
雨宮 透子(あまみや とうこ)
十七歳。蒼太のクラスメイト。放送委員で、人の言葉より沈黙を観察する。明るく社交的に見えるが、兄の失踪を独自に調べており、四領域へ近づきつつある。
久世 晴臣(くぜ はるおみ)
十七歳。蒼太の友人。軽口が多く、教室の空気を読むことに長ける。蒼太を「普通の友人」として扱う数少ない人物。
柊 澪(ひいらぎ みお)
十三歳。蒼太の妹。兄思いで、怖い時ほど平気なふりをする。南領域の車に轢かれかけた事件が、蒼太の平穏を終わらせる。
柊 深冬(ひいらぎ みふゆ)
四十二歳。蒼太と澪の母。心臓に持病があり、自宅療養と短時間勤務を繰り返している。蒼太の過去を知らない。
燈城 絃真(とうじょう げんま)
二十三歳。南領域の武闘派カルテル〈赫路〉を束ねる若き首領。暴力と恐怖を「最も平等な言語」と信じる。
墨坂 綴(すみさか つづる)
二十歳。東領域の情報カルテル〈玻璃〉の統括者。人間を秘密の集合として捉え、街中のカメラと噂を商品に変える。
雨代 景(あましろ けい)
二十四歳。西領域の資金網〈レジャー〉代表。投資会社、地下銀行、違法賭博を一本の帳簿でつなぐ。
千早 鉄臣(ちはや てつおみ)
二十七歳。北領域の武器組織〈冬塔〉首領。元自衛官。規律を重んじ、四領域の中では最も兵士に近い。
兵藤 征士郎(ひょうどう せいしろう)
五十八歳。兵藤ホールディングス会長。慈善家として知られる一方、四領域を東京の汚れ仕事に利用する支配者。御堂蓮を唯一の側近として置く。
兵藤 玻奈(ひょうどう はな)
二十五歳。四年前に死亡したとされる兵藤征士郎の娘。〈エコー・プロトコル〉では候補者を監視する側にいたが、父を告発しようとして存在を消された。蒼太たちを施設から逃がした過去を持つ。
御影 絢音(みかげ あやね)/御影 叶理(みかげ かなり)
絢音は景榮学園三年生で生徒会副会長。叶理は二年生で、その弟。叶理は姉を救うために蒼太を四領域へ売るが、罪を認めた上で蒼太と共闘する。