あらすじ

妻の最期の言葉は「分かった」だった。  何が分かったのかを聞く前に、彼女は逝ってしまった。  折口汎、五十八歳。  元・認知科学者。  今は雑居ビルの三階で「理解収集室」という、探偵ともカウンセラーともつかない仕事をしている。人の「分からない」を預かり、時に解体する。趣味は手品。種を知っても驚きが消えない体質だと、彼は言う。  そこへ、数学科を中退した二十七歳が来る。三年かけた証明を、ある朝ついに理解した。 だが翌朝には感覚だけが残り、中身が消えていた。彼女はそれを「理解の幽霊」と呼ぶ。  二人は実験をする。何の意味もないでたらめな図を、順番と間だけを設計して見せる。 六人中五人が、深く納得した顔をした。  じゃあ、私の三年間は――。  彼女の問いに、彼は答えられない。  やがて二人は、毎週日曜に信者へ「分かる」だけを供給する宗教と、その余命半年の 教祖に行き当たる。教祖は折口のかつての師であり、そして、亡き妻に会っていた。  最後に、封印していた妻のノートを、折口はゆっくりと開く――。

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カクヨム
カクヨム2026/07/29
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