あらすじ
霧に沈む沿岸都市・エルンフェルト。ここでは百年に一度、街の一区画が"記録"ごと消滅する現象――《欠落(ラクーナ)》が発生する。消えた区画に住んでいた者は、他人の記憶からも、公文書からも、写真の中からさえ抹消される。
《欠落》の観測と復元を担う機関「索引院(インデクス)」に所属する少年リヒト・アーレンは、消えた妹を取り戻すため、存在しなかった人間を探し出す特異な才能を持っていた。
そんな彼の前に現れた、隣室に越してきたばかりの少女ユイリカ・セレン。柔らかな笑みの奥で彼女は呟く。 「――ねえ、リヒトくん。あなたの妹さんって、本当に最初からいたのかしら?」
彼女は何者か。味方か、それとも《欠落》を引き起こす側の存在か。 互いの真意を隠したまま始まる、緻密な嘘の応酬。すべての会話が伏線となり、優しい紅茶の湯気の向こうで、街は静かに崩れ始める。