あらすじ
夜の博物館。誰もいなくなった展示室で、ティラノサウルスの骨格標本がひそかに動き出し、独り言を始める。来館者から「腕が小さい」と言われ続けることを嘆くティラノは、その理由について、近年の研究で明らかになった「強力な顎や頑丈な頭骨の進化と前肢の縮小」という説を紹介する。巨大化する獲物を狩るため、頭と顎を武器として発達させた結果、使われなくなった前肢が小さくなったという進化の物語だ。さらにティラノは、トリケラトプスとの攻防や、自らの「地上最強」というイメージについてもユーモラスに語り、人間が自分の腕について何千万年も考えてくれることへの感謝を口にする。やがて朝が訪れ、ティラノは何食わぬ顔でいつもの展示姿に戻る。その直後、幼い子供が「ティラノサウルスの腕って、なんでこんなに小さいの?」と尋ねる。ティラノは動かない。しかし、その骨格はどこか満足げに見えた。