あらすじ
ラーメン店「ヴェダ亭」を夫・熊一と切り盛りしていた爽子は、ある日突然、夫を交通事故で失う。しかし現場から消えたのは夫の姿だけ。遺体は見つからず、四十五日もの間、爽子は必死に行方を探し続けるが、手掛かりは何一つ得られなかった。
諦めかけたある日、失踪したはずの夫から一通のメールが届く。
『ここで待ってる』
記されたリンクを開いた瞬間、爽子は北海道によく似た異世界へと転移してしまう。
そこで待っていたのは、何十年もの歳月を生き、王のような地位を得た夫・熊一だった。そして彼の隣には、新たな「妻」と名乗る女性が立っていた。
異世界と元の世界では時間の流れが違い、熊一にとっては爽子と別れてから何十年もの年月が過ぎていたのだ。長い孤独の末、この世界で新たな家庭を築いた熊一は、それでも爽子を忘れられず待ち続けていたという。
しかし、爽子にとってはまだ四十五日。
「だからって、別の人と結婚していい理由にはならない」
夫への未練を断ち切った爽子は、過去に縛られることをやめ、自分自身の人生を歩む決意をする。
やがて彼女は、この世界にラーメンや味噌、醤油、出汁の文化が存在しないことに気づく。
「だったら、私が作ればいい。」
ラーメン、焼き魚、唐揚げ、おでん――北海道の豊かな食文化と日本の家庭料理を武器に、異世界北海道で食堂酒場を開くことを決意する爽子。
美味しい料理は、人の心をつなぎ、傷ついた過去を癒やしていく。
これは、夫を失った女性が新たな人生を切り開き、異世界北海道一番の食堂酒場を目指す、グルメと再出発の異世界スローライフ物語。