あらすじ
*登場人物*
百瀬百香――二十九歳。映像配信会社で公開許諾を担当する、理屈と手順に強い主人公。
朝倉葵――百香の幼なじみ。中学時代の自主制作特撮で主演ヒーローを演じた。
香坂沙樹――調香師。十五年前の撮影記録をひそかに保管している。
安西ヒロヤス――映写・音響機器の修理業。仮面と録音を通して自分の声を届けていた。
黒田利真――信用金庫勤務。勝つために手順を飛ばした過去を抱える。
*あらすじ*
閉館を控えた祖父の映画館「銀杏座」で、百香は中学時代に仲間五人で作った自主制作特撮を大画面で再生されてしまう。銀杏の冠、弁当箱の変身ベルト、大げさな決め台詞。今すぐ消したいほど痛い映像だった。
だが、本当に封印したかった黒歴史は作品そのものではない。十五年前、校内放送で映像が無断再生され、嘲笑が起きた日。百香は責任を恐れ、脚本も監督も自分なのに「葵が中心だった」と嘘をつき、仲間と大好きだった創作を切り捨てた。
最終上映の候補に挙がった映像を、残すのか、消すのか。五人は誰か一人でも拒否すれば公開しないと決め、それぞれの傷と本音を確かめていく。そして、未完成の最終話を今の自分たちで撮り直すことになる。
恥ずかしい過去は、消せばなかったことになるのか。笑われた記憶は、誰かの続きを照らせるのか。閉館する映画館を舞台に、五人が黒歴史へ本名で向き合う、笑って泣ける再生の物語。