あらすじ
*登場人物*
麻友――白蜜を口にできない十九歳の宮廷菓子職人。亡き母の未完レシピを完成させようとしている。
アシュリ――古いかまどに宿る、口の悪い火の精霊。菓子を細かく批評するが、実は味覚がない。
柑菜――食事制限のある人々を支える食養師。
文――古い記録から失われた約束を探す王城書記。
樹季――安全を第一に厨房を束ねる責任者。
*あらすじ*
海洋国・白凪国の王城で働く麻友は、白蜜症のため菓子を味見できない。それでも香り、焼ける音、火の色、食べた人の表情を記録し、亡き母のような職人を目指していた。
年に一度、海底の古代都市が姿を現す「返り潮」まで、あと十日。母が愛用した古いかまどの撤去が決まった夜、灰の中から火の精霊アシュリが現れる。かまどが壊されれば彼は消え、城の火まで海へ奪われるという。
同じ夜、母の未来への手紙に浮かんだのは――「純白より白い菓子を、完成させないで」。
なぜ母は、自ら残したレシピの完成を止めるのか。失われた頁、錆びた懐中時計、食卓から外された人々へ渡されてきた二個の菓子。麻友たちは小麦粉の妖精に振り回されながら、忘れられた約束を追う。
母と同じ生き方を選ぶのか。それとも、自分も食べられる新しい菓子を作るのか。