あらすじ
シェルナ王国の第三王女クラリスは、社交も外交もからきしで、来る日も来る日も魔法式ばかりいじっている変わり者だった。
そんな彼女に、ある日突然、大国アルダーンへの輿入れが決まる。表向きは友好の証。その実、優秀すぎる兄を警戒したアルダーンが差し出させた、人質だった。
嫁いだ先で待っていたのは、誰にでも優しく誰のものにもならない若き国王ジルヴェスターと、やる気のない天才魔法師ルーク、そして――八百年間、誰にも読めないまま埃をかぶっていた古代魔法の書庫。
「読めなくていいんです。見たいだけなので」
彼女にとっては、ただの好きなものだった。けれどその「好き」が、凍てつくアルダーンの冬を、辺境に迫る異変を、そして八百年前に途切れたはずの何かを、少しずつ動かしはじめる。
魔力量は人並み。派手な力はない。ただ、誰よりも式を読み、誰よりも式を削る。
これは、役立たずと呼ばれた姫が、たった一枚の魔法式から国を変えていく物語。