あらすじ
テレシアは、医学教育を終えたばかりの若き医師。彼女は、群島の境界に位置する辺境の地で医療に従事する道を選んだ。高い理想を胸に、彼女が抱いていた決意はただ一つ――優れた医師となり、これまで学んできた医学の知識をもって、目の前の患者一人ひとりと向き合うことだった。
しかし、現地に到着したテレシアはすぐに気づく。そこで彼女が直面する問題は、病気を診断し、治療するだけでは到底解決できないほど複雑なものだった。過酷な自然環境、医薬品や医療機器の不足、理解しがたい住民たちの言動、そして腐敗した役人たち。そうした現実を前に、彼女が身につけてきた医学知識は、必ずしも教科書どおりに通用するとは限らなかった。
さらに事態を複雑にしたのは、彼女とはまったく異なる考え方を持つ二人の先輩医師との出会いだった。一人は、医療行為と医療過誤の境界さえ疑わせるような治療法を用い、もう一人は、テレシアがこれまで信じてきたほとんどすべての原則に反するような考え方を彼女に説く。
この地では、患者一人ひとりが抱える問題は、もはや単なる医学的な問題ではない。病の背後には、伝統、文化、貧困、知識の不足、さまざまな利害、そして道徳的な選択が複雑に絡み合い、一つの症例を解決することさえ困難にしていく。
多くの患者と向き合えば向き合うほど、テレシアは自らが信じてきたものに疑問を抱くようになる。
――本当に「良い医師」とは、いったいどんな医師なのだろうか。