あらすじ
神が人間を見捨ててから、百二十三年。
世界は魔物に蹂躙され、人々は高い壁の内側で息を潜めながら生きていた。
そんな荒廃した世界に、ただ一つだけ「楽園」と呼ばれる都市がある。
魔物が近づかず、豊かな水と作物に恵まれた城塞都市エデン。
故郷を失い、たった一人で荒野をさまよっていた少年レイは、その門前で力尽きる。
彼を救ったのは、エデンに暮らす美しい少女リリアだった。
自分の水を分け与え、見知らぬ少年の命を救った彼女に、レイは次第に惹かれていく。
しかし、楽園の平穏には、誰にも知られてはならない秘密があった。
エデンが魔物から守られているのは、神の奇跡などではない。
都市の地下には、神が残した装置によって、世界最強の魔物が飼われている。
そしてその力を維持するため、一定の時が訪れるたび、美しい少女が密かに捧げられていた。
次の生贄として選ばれたのは、リリアだった。
世界を救う力などない。
特別な血筋も、選ばれた才能もない。
それでもレイは、彼女を見捨てることだけはできなかった。
これは、神に見放された世界で、一人の少年が惚れた少女を守るために立ち上がり、その勇気がやがて多くの人々を動かしていく物語。
後に世界で初めて「勇者」と呼ばれる者の、始まりの物語である。