あらすじ

高瀬奈緒が旅館の玄関で最初に受け取ったのは、花束ではなく請求書だった。 「ようこそ風待ち荘へ。支払い期日は明日です」 番頭の笹原は真顔でそう言って、電卓を置いた。 ロビーには誰もいない。売店の温泉まんじゅうだけが、なぜかやる気のある照明を浴びていた。 奈緒は帳簿をめくり、三ページ目で天井を見上げる。 赤字、赤字、赤字。 夫の亮は横でつぶやいた。 「逆に、伸びしろしかないね」 中学生の娘は「そのポジティブ、今いちばんいらない」と切り捨て、小学生の息子はフロントで勝手に名札を作っていた。 そこには太字でこう書いてある。 こども支配人。 奈緒は深呼吸して、呼び鈴を鳴らした。 「本日より、営業立て直します。たぶん」

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/07/28
  • 現在の作品風待ちの移住者たちー温泉旅館再生編