あらすじ
商人から男爵へと成り上がった貴族の三男坊に生まれた『アーガス・シックザール』は五歳の時、貴族なら誰しも行う魔力検査を受け、大魔法使いへと至る才能が明らかとなり、魔法学院にほぼ強制的に入学した。
溢れんばかりの才能で次々と魔法を修めていく彼は、十五歳を迎える頃に学院の教師へとその名を連ねていた。
しかし、そんな才能に恵まれ過ぎた彼の人生には努力して届かない壁も、追いかける目標もなかった──ちょっとした暇潰しに闘技場を訪れるまでは。
巨大な体格を誇る強敵を前に『彼女』が見せたのは圧倒的な力ではなく、紙一重で攻撃を避け、最小限の動きで勝利を掴む『回避』の技術だった。
「どれほど強力な攻撃でも、当たらなければ意味などない」
その言葉に感銘を受けたアーガスは、生まれて初めて心から憧れるものを見つける。
魔法ではない。
才能でもない。
己の身体と感覚だけを頼りに、極限まで磨き上げられた技術。
大魔法使いへの道を歩む少年は、誰も予想しなかった新たな研鑽を始める。
──魔法使いが回避を極める物語を。