あらすじ
だから宗教や信仰や陰謀論が悪いんじゃなくて、そもそも人間が間違っているって話さ――――。
人間はさ。弱いんだよ。これ以上ないほどに。なのに思い上がっている。この世界は自分の思い通りになるものだって。誰だって心のどこかで。なぜかって? そう思えなくなった時点で人は狂ってしまうからさ。前に進む理由がなくなってしまうからね。生きる理由と言い換えてもいい。カルトやスピリチュアルのせいで狂うんじゃない。思想が強いんじゃない。人間が弱いんだ。弱いから縋って、自分を見失う。我を失う。弱いからね。常に理解できないものを恐れている。知らないものに怯えている。思い通りになってくれないから。それを考えることに対してすら及び腰だ。なぜだろう? 考えることはつまり。自分の間違いに気づく可能性を常に孕むからさ。誰しも深層心理ではそれに気づいている。だから結局。ソウイウモノに。神や。魔法や。陰謀や。なんとか。そういう。ともすれば。頭のいいフリをした間違っていないフリをした他でもない赤い他人に考えてもらったご都合的なレッテルを自分で貼ったことにして。安心したがるんだよ。理解したことにして。自分を騙すんだ。そうでもしないと頭がおかしくなってしまうから。怖くて怖くて直視していられないから。でも。それが自分の知らないところに。自分の視界の外側にあるのも。また怖い。怖い。怖くてたまらない。だからラベリングしたそれを丸ごと呑み込む。にがーい薬を呑むためのカプセルやゼリー、オブラートみたいなものさ。その中身が何なのかも知らず。理解せず。盲目的に理解したことにして。みんなが呑み込んでいる。言っとくけど。苦いからって良薬なわけじゃないよ。むしろ依存性抜群の麻薬みたいなものだね。一応薬ではあるけど毒薬。あ。麻薬は元来良薬だっけ? あはは。まぁどうでもいい。でもさ。苦いから。苦しいことだから。苦労したから。必ず良い効果がある。あとで報われる。だなんて。それこそ個人にとって都合のいい思考放棄願望。信仰でしかないよね。いいかい? 善人は報われないし天国に行かない。悪人は報いを受けないし地獄に堕ちない。因果に準ずる応報はない。信じるものは救われない。願えば夢は叶わない。偶然も奇跡もあり得ない。あるのは単なる勘違いと思い違いと永遠の食い違い。間違った結果だけ。
――――だから間違っているのさ。この世界が間違っているのではなく、人間が間違っている。