あらすじ
――魔法があれば、救える。
そう信じて二十年。俺は王国最高峰のヒーラーと呼ばれるまでになった。
だが、この世界の回復士たちは誰も「診断」を知らない。腹が裂けていれば腹を治す。それが常識だった。誰も患者の瞳孔を見ない。脈を数えない。呼吸を聞かない。
だから、助かるはずの命が死んでいく。
俺は撤退命令が出ても、負傷者を置いて戦場を離れなかった。全員を診た。全員を治した。
その結果——勇者パーティーを追放された。
「お前は――回復士として、正しすぎる」
そして追放されたその日、俺はまた一人、救えなかった。
診断は正しかった。処置も正しかった。それでも間に合わなかった。
あと五分。
この五分に、二つの人生で何度負けてきただろう。
――回復では、届かない。
この世界には、決して触れてはならない禁忌がある。死者を呼び戻す術式、《リザレクション》。神の領域と呼ばれ、誰も到達できなかった魔法。
本当に、それは神の領域なのだろうか。
これは、二度目の人生を生きるヒーラーが、「命」と「死」の常識を書き換えるまでの物語。