あらすじ

ある朝から、男の名が、世界の記憶から端(はし)欠けていく。人は彼の名の一片を発音できなくなり、そこに小さな空白が生まれる。役所の記録も、旧友の記憶も、順に薄れていく。 不思議なことに、名を失うほど、彼は身軽になる。名に結ばれていた役や関係や期待が、名ごと解けて落ちるからだ。喪失のはずが、解放の顔をしている。 けれど、失われた名は消えてなくならない。その名が担っていた役や想いは、形を変えて、別の誰かの中に残っている。彼は末端で、それを一人だけ「見て」しまう。 名字、肩書、あだ名、ふたりだけの名、最初の名――呼ばれ方をひとつずつ失っていく男の、静かな六つの朝。各話独立の掌編で綴る、現代ファンタジー。

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カクヨム
カクヨム2026/07/28
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