あらすじ
都内のシステム関連企業で主任として働く、三十六歳の会社員・門倉啓介。
仕事も収入も安定し、独身ゆえに貯金もそれなり。大きな不満はないものの、同じような毎日を繰り返しながら、少しずつ疲れていく人生を送っていた。
そんなある休日の朝、コーヒーを飲んでいた啓介の視界に、突然メッセージが現れる。
『あなたは《創世札典/GENESIS DECK》を獲得しました』
呼び出された分厚いバインダーに収められていた最初の土地カードは、彼が暮らす賃貸マンション――《借宿/Borrowed Haven》。
そこから一日に一度だけ得られる、たった一つのマナ。
チュートリアルとして与えられた生命術式《日々の修繕/Daily Maintenance》を使うと、長年悩まされていた肩こりも、腰の重さも、眼精疲労も、指先の小さな傷も一瞬で消えてしまった。
どうやら啓介が手に入れたのは、土地からマナを生み、そのマナを対価として望んだ効果をカードにできる、TCGそのもののような異能らしい。
生命、知識、物資、熱量、境界。
五種類のマナを使い分ければ、身体の治療、短時間の未来予知、物質の生成、電気や熱の操作、空間収納まで、理論上は何でも実現できる。
啓介はまず、自分の疲労や体調不良を治し、未来を少しだけ先読みしながら、毎日の生活を豊かにしていく。
未来予知を利用して小遣いを稼ぎ、仕事上の失敗を避け、事故や災害を事前に警告する。やがて治癒術式を他人にも使えるようになれば、これまで治らなかった怪我や病気を癒やし、その力を新たな商売へつなげていく。
しかし、慢性疾患の完治、失われた身体組織の再生、そして若返り。
啓介が望む奇跡が大きくなるほど、要求されるマナも三点、五点と増えていく。
一日に得られるマナは、まだ一つだけ。
それなら、増やせばいい。
昔TCGを遊んでいた啓介は、今日のマナを使わず、毎日少しずつ注ぎ込むことで、恒久的にマナを生み出すアーティファクトを作れることに気づく。
さらに、自分の土地を増やせば、もっと多くのマナを得られるのではないか。
そう考えた啓介は、長年貯めてきた預金を使い――山を買った。
格安山林を土地カードへ変え、工房を作り、マナ・アーティファクトを増産する。未来予知と治癒術式で得た資金を次の土地と設備へ投資し、啓介のマナ基盤は雪だるま式に拡大していく。
一日一マナだった小さな奇跡は、やがて人の運命を変え、災害から都市を救い、老いさえ覆す力となる。
そして境界の彼方を観測するカードが完成したとき、啓介は知る。
この世界の外にも、土地は存在する。
これは、普通の中年サラリーマンが一枚の賃貸住宅カードから始め、現代社会に魔法の経済圏を築き、やがて数多の次元を旅するまでの物語。
なろうハーメルンにも掲載してます。