あらすじ
「お前はクビだ! 婚約も白紙にする!」
パン職人のフィオは、王太子様にそう宣告され、無職になった。
フィオは神様から「しあわせのパン」を作る能力を授かっていた。フィオの作ったパンを食べるとまれに幸せが訪れるというものだ。だから重用され、王太子様と婚約までした。
しかし、フィオには致命的な弱点があった。
パンを焼くのが絶望的に下手なのである。
二十回も黒コゲにして、しまいには王宮の厨房と食糧庫まで全焼させたら、王太子様にクビと婚約破棄を言い渡されてしまったのだ。
とほほと黒焦げのパンを齧っていると、宰相のロリス様にうちでパンを作らないかと誘われる。
そこで出会った魔法使いのオルステッドが、パンが黒コゲになる意外な原因を見抜く。
「フィオ、あなたは火の精霊に『愛されて』います。溺愛されています」
パン職人には迷惑すぎる火の精霊を制御する特訓を始めて数か月。そこへフィオをクビにした王太子が、「国の一大事だ、パンを五百斤焼け!」と押しかけてきて――