あらすじ
彼は世界最恐の魔術師だった。
人も魔物も世界の理すら支配する。
そう語られる存在――『支配の魔術師』。
本人もまた、自分が善人ではないことを理解していた。
だから誰かを助けるつもりなどなかった。
とある雨の日のこと、気まぐれで奴隷少女を助けてしまう。
それだけだった。
しかし少女は、彼の想像とは違う反応を見せる。
恐れない。怯えない。憎まない。
ただ、渡された食べ物を大切そうに抱えて言った。
「あなたは……優しい人です」
世界中が彼を支配の魔術師と呼ぶ中で、少女だけが彼を知らなかった。
これは、誰にも愛されることのなかった魔術師と、誰にも名前を呼ばれたことのない少女の、不器用な共同生活の物語。