あらすじ
「あ、神様だ!」
おれは弾かれたように駆け出した。胸が弾み、身体が自然と前のめりになってしまう。
目の前まで来てぴたりと立ち止まると、神様は目を細め、穏やかに微笑んだ。おれもつられて微笑み返し、それから何気なく周囲へ視線を巡らせた。
どうやらここは実家の近くの道路らしい。小学校へ通うときも、駅へ向かうときも何度となく歩いた道だ。電柱の位置、少し傾いたオレンジ色のカーブミラー、立ち並ぶ家々の古び具合、塀越しに見える庭木、何もかもが記憶そのままだ。懐かしさが胸の奥からじわりと込み上げてくる一方で、よく覚えているものだと感心も湧いてきた。普段は忘れているつもりでも、記憶というのは脳のどこかに確かに蓄えられているものなのだろう。それがこうして夢の世界に浮かび上がっているのだ。