あらすじ
経営破綻寸前の老舗百貨店が募集した、閉店後限定の高額アルバイト。
仕事は単純だ。試着室に残った体温を、特殊な吸熱器で回収する。二十度未満は無価値、三十六度以上は特別手当。一晩で会社員の月給を稼げる条件に、主人公は飛びついた。
初夜、誰も使っていないはずの試着室がすでに温かい。鏡には人の形の曇りが残り、床には両足を揃えて立っていた跡だけがある。会社の指示は一つ。「再加熱した部屋からは、二度回収するな」。
だが二度目の体温は十倍の値段で買い取られる。欲に負けた主人公は、VIP階、閉鎖階、そして地下保管庫へと踏み込んでいく。体温を抜きすぎると部屋は凍結し、氷のカーテンの裏に人型の輪郭が浮かぶ。回収が足りなければ、その形は試着室から出てくる。