あらすじ
王宮の庭師見習いエリアスは、十八の春、王族しか立ち入れない「月庭」の鍵を託される。
そこで彼が出会ったのは、緑の髪とツタの精霊アイヴィ。
月庭の花々は、人々の「乗り越えられた悲しみ」を光に変えて咲き誇り、精霊たちはその光を糧に生きていた。
しかし、隣国との戦が迫り、木材供出のため月庭の伐採が王命として下される。
庭に隠された歴史、かつて憎しみに満ちた王国を癒すため、初代王と精霊が交わした契約を知ったエリアスは、アイヴィと共に最後の賭けに出る。
庭中の精霊が姿を現し、一夜だけ人々に忘れていた記憶を思い出させる奇跡を起こす。
だが、その代償としてアイヴィたち精霊は力を使い果たし、静かに姿を消していった。
数十年後、孤児院育ちの庭師見習いノアが同じ鍵を受け継ぐ。
花に興味のなかった彼は、石壁に一輪だけ咲く白い花に水をやるうち、都市開発で塞がれようとする裏道と、そこに宿る名もなき人々の祈りに気づく。
エリアスから語り継がれた物語をなぞるように、ノアもまた、小さな奇跡を通して大切なものを守り抜く。
花は人を癒すのではなく、人が花によって自らを癒す力を思い出す。
そんな祈りが、庭師から庭師へ静かに受け継がれていく。