あらすじ

この街には、二十歳になった年の七夕の夜、自分の「黒歴史」が光る球となって空から降ってくるという言い伝えがある。イタい過去を野球のバットで打ち返す——それがこの街の成人儀式だ。  中村悠斗は、中学時代の親友・斉藤と、野球部で三年間バッテリーを組んできた。誰よりも近くで支え合い、誰よりも深く分かり合ってきたはずの二人。だが引退の日、部室裏で交わした抱擁だけは、五年間、互いに一言も触れずにきた。  二人を陰で支え続けてきたマネージャーの須藤は、実は斉藤に想いを寄せていた。しかし引退直後、告白を断られた須藤は、その傷が癒えぬまま、二人の本当の関係を目撃してしまう。動揺のまま放った「気持ち悪い」の一言は、三年間の絆をあっけなく壊し、須藤自身をも三人の輪の外へと追いやった。  あれから五年。二十歳になった中村の元にも、あの夏の記憶が黒歴史として降ってくる知らせが届く。斉藤も、そして須藤も、同じ運命から逃れられない。  七夕の夜、指定された神社の境内で再会した三人。中村と斉藤は、斉藤自ら作った歪な二人用バットで、かつての想いを共に打ち返そうとする。そして現れた須藤もまた、五年越しの後悔を抱えたまま、自分の黒歴史と向き合うことになる。  打ち返した先で分かったのは、恋をしたことは黒歴史ではないという、単純だけれど誰も気づけなかった真実。誰かを傷つけたことだけが、本当の黒歴史なのだと。  三人がそれぞれの想いに決着をつけたとき、境内には短冊がひとつ揺れていた。「来年も、お前とくだらないことで笑っていられますように」——それは、五年間止まっていた時間が、ようやく動き出した証だった。

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エブリスタ
エブリスタ2026/07/26
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