あらすじ
「詩織ちゃんはさ、本は読まないの? せっかく可愛い、しおりって名前なのに」
「絵本とか漫画はたまに読むよ。かすみちゃんが読むようなやつは嫌い」
「なんで?」
「文字小さいし、同じ行何回も読んじゃうから飽きるの」
「なるほど、文字の海に溺れちゃうんだね?」
「なにそれ、変なの」
「そんな詩織ちゃんに、これをあげよう」
「え、これ、かすみちゃんの栞じゃん」
「そう。詩織ちゃんは、栞の語源を知っているかな?」
「知らないよ。なに?」
「「栞って、山を歩くときに道に迷わないよう、木の枝を折り曲げて目印にした枝折るという行為に由来してるんだよ」
「だからなに?」
「これを行の横にあてがって、一行ずつずらしながら読んでみて。そうすれば、文字の海で迷子にならないよ」
「……本当にこれ、貰っていいの?」
「うん。私はもうすぐ遠くに引っ越しちゃうから、その栞を私だと思って、大切にしてね」
「……うん。