あらすじ

十一歳の黒瀬湊は、兄・颯真の葬式に参列していた。 山ノ宮神社の石段下で発見された兄の死体。 原因不明の心停止。 首筋に残された、黒い線。 誰もが事故として受け入れる中、祖父・宗一郎だけは古びた懐中時計を握りしめ、呟いた。 「……また、間に合わなかった」 宗一郎が時計の文字盤の奥を開いた瞬間、世界は巻き戻る。 次に湊が目を覚ましたとき、死んだはずの兄は生きていた。 しかし、祖父の左腕は失われ、家族の記憶や病院の記録までもが、最初からそうだったかのように書き換えられていた。 生き返った兄は、本当に湊が知っている兄なのか。 なぜ町中の時計は、午後六時四十二分で止まっているのか。 そして、失われたはずの時間から湊へ届いた、自分自身の筆跡による警告。 『兄を止めろ。』 記憶も、記録も、未来から届く言葉さえ信用できない。 それでも湊は、もう一度兄を失わないため、山ノ宮神社の鳥居の向こう側へ足を踏み入れる。 これは、誰かを救うたびに何かが失われる町で、忘れられた死と、選ばれなかった時間をめぐる物語。

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小説を読もう2026/07/27
  • 現在の作品時は復讐を忘れない