あらすじ
「聖女様は、もう用済みです」
三年、王都の結界をたった一人で維持してきたセラフィーナは、祈りの後に壁へ手をついていた、ただそれだけを「力が衰えた証拠」とされ、神殿を追われた。後任は、神託を受けたばかりの少女フィオナ。
引き継ぎ書は、ない。三年間、休みも代理も、記録を残す暇さえ与えられなかったのだから。
このままでは、この子もわたくしと同じ坂を、一人きりで転がり落ちる。セラフィーナは荷をほどき、一晩かけて三年ぶんの身体知を書き写し、大神官に願い出た。聖女を二人にして、当番を組ませてください、と。
大神官は、それを拒んだ。「聖女は、一人と決まっている」――その拒みが、翌朝、街を瘴気に呑ませかける。