あらすじ
「お前の香水はただ臭いだけだ」——第二王子にそう告げられ、大貴族の令嬢セレナ・ヴァルモンドは公衆の面前で婚約破棄された。剣も魔法も使えぬ「無能な調香師」として。だが、彼女は静かに微笑み、去り際にただ一言告げた。「今宵から、王宮では3日以内に3人が死にます。私はもう、止めませんので」——。
翌朝、王宮では原因不明の連続死が始まる。実は10年間、王宮に忍び込んでいた微量の毒香を、毎日中和していたのはセレナ唯一人だった。誰にも気づかれず、感謝もされぬまま。母を毒香で殺された過去を持つ彼女は、嗅覚科学と調香術を極めた「香りの魔女」だったのだ。
崩壊する王家を尻目に、辺境の覇王リオンハートが彼女を迎える。「お前の鼻は、俺の国の心臓になる」——。声を荒げず、復讐を口にせず、ただ空気に溶かした一滴の香りで敵を詰ませていく。これは、分子ひとつで王国を書き換える、静かで冷たい復讐録。
追放した者たちが「あの女の香水か」と気づく頃には、もう遅い。