あらすじ
25歳、独身、彼氏なし。事務員の私は、会社では名前すら覚えてもらえず、家では甘やかされた妹とばかり比べられて生きてきた。
妹の結婚が決まった夜、私は生まれて初めて自分のために何かをしようと決意する。そうして登録したマッチングアプリで、いちばん最初に表示されたのは油絵に描かれた王子たった。
プロフィール写真は油絵。職業欄には「王子」。表示された距離は、4,829光年。
どう見ても業者だ。通報しようとした指が、なぜか止まった。
――マッチングしました。
やり取りを始めて、おかしなことに気づいた。
この人の言葉は、優しすぎる。
今日は何を食べたのか。明日は何の日か。この時間まで起きているのは、いつものことか。誰も私に聞いたことのないようなことを、王子はひとつずつ、丁寧に聞いてくる。
そしてその夜、画面の向こうから光が伸びた。
「ずっと、貴方を探していた」
現れた男は床に膝をついて、私の手を取って、そう言った。異世界の王子は、私に会うためだけに、すべてを置いてこちらへ来た。
誰にも選ばれなかった私が、生まれて初めて誰かに見つけてもらう話。