あらすじ
私には、誰にも語ったことのない生涯がある。
生まれてすぐ、私は兄弟たちと違うことに気づいてしまった。
無邪気に木の葉を追いかける兄弟たちを見て、ただ一人「何故」と立ち尽くした、あの日から。
何本目かの尻尾が生え、その数だけ出会いと別れを重ねてきた。
幾つもの都市を渡り歩き、時代を越えた。
幾つもの姿を経ながら、私は途方もなく長い年月を生きた。
出会った人々の多くは、もうこの世にいない。
それでも私は、皆のことを一人残らず覚えている。
これは、一匹の猫が幾つもの時代と姿を越えて紡いだ、恩返しの物語。
ずっと、一緒だよ。
魔法が息づいている世界。
魔物が跋扈し、人々は安全な都市国家とそれを結ぶ街道を頼り、それぞれは通貨によって緩く結びつく。
隊商護衛・要人護衛・開拓護衛・渡りの用心棒といった、多様な護衛稼業が経済と治安を支えている。
主人公は、知性を持った一匹の猫。長い年月を生きるうちに、獣から魔獣へ、そして人の姿へと変わっていく。
物語は主人公が旅した何世代にもわたる長い時間経過そのものを通して語られる。