あらすじ
大学の農場実習中、トラクターに轢かれて命を落とした大学生・山岡 慎(やまおか しん)。次に彼が目を覚ましたのは、人間が誰一人として立ち入らない世界の果て――険しく、大自然豊かな山脈のど真ん中だった。
神様からのチート能力もなければ、便利なステータス画面もない。あるのは、ただ異様に耳が長く、人間の数倍の寿命を持つ「エルフ」のような身体だけ。
そして唯一の武器は、頭の中にある「農学部のうろ覚えな知識」だった。
「火起こしの原理は知ってる……けど、実際にやるのってこんなに難しいのか!?」
「お酢を作ろうとしただけなのに、ただの腐った豆ができた……」
「この世界のイノシシ、デカすぎて手作りの罠が粉砕されたんだけど!」
生きるための火、毎日の食料、雨風をしのぐ洞窟の家。すべてをゼロから手探りで実験し、失敗を重ねていく。
たとえ一つの実験に失敗して数年を無駄にしても、「まあ、長命種だしな」と笑い飛ばす。
これは、圧倒的な「時間」を味方に、何十年、何百年、何千年とかけて過酷な環境を極上の「スローライフ」へと変えていく、一人の男の泥臭くも愛おしい山岳開拓記録である。