あらすじ
企業は、将来の利益を見込んで資金を調達できる。
国は、将来の税収を前提に国債を発行できる。
それなら子どもも、自分の将来価値を使って、今必要な教育費を得られないだろうか。
投資会社を率いる水城直人は、経済的な理由で学ぶ機会を持てない子どもたちのために、新しい金融商品を構想する。
今、教育費を受け取る。
成人後、十分な所得を得た場合だけ、その一部を返す。
複数の子どもの未来を束ねれば、リスクを分散し、回収した資金を次の世代へ回すことができる。
寄付や善意に依存せず、誰もが自分の未来を使って学べる仕組みになるはずだった。
しかし、教育現場で子どもを支えてきた倉田真紀は問う。
「その子が大人になった後の人生は、誰の投資成果なのですか」
高所得になりそうな子だけを選ぶのか。
地域に残る子や、収入につながらない学びを望む子は、投資に値しないのか。
利益を抑えれば投資家は集まらない。
利益を求めれば、子どもの未来に価格を付けることになる。
行き詰まった水城は、大規模な金融商品をいったん諦め、一つの地域で小さな実験を始める。
明確な夢を語れない子。
やりたいことが分からない子。
一度始めても、すぐにやめてしまう子。
水城がそこで目にしたのは、投資判断の数字には現れない、試した後に初めて生まれる希望だった。
未来の価値は、現金でしか返せないのか。
支援された人は、いつまで支援される側なのか。
人の未来を評価し、回収しようとした投資家が、未来の価値と、その返し方を問い直していく現代社会派小説。