あらすじ
一八七七年。西南戦争最後の地・城山。
薩摩の剣士・霧島刃は、親友と仲間を救うため、ただ一人で敵陣へ斬り込んだ。
敵の砲座を破壊し、血路を開きながらも、刃は彼らを救うことができなかった。
敗戦後、生きる意味を失った刃は、刀だけを抱いて琉球行きの船へ乗る。しかし船は嵐に呑まれ、三人の異邦人とともに、清国浙江の小さな漁村へ流れ着く。
そこは、阿片によって大人たちが壊れ、子供たちが暮らしを支える村だった。
村を守る白家の娘・白燕華。普段は穏やかに子供たちへ粥を配る彼女は、白い笑い面を被ると、両手の九節鞭で敵を容赦なく打ち倒す「血の燕」へと変貌する。
刃を暗殺する密命を帯びた女忍び・時雨。
琉球拳法と二本の釵を使う、陽気な男・蓮。
亡き父の武器を追う、型破りな鍛冶師・弥生。
偶然同じ船に乗り合わせた四人は、白家に身を寄せながら、村を蝕む阿片と、それを商いにする者たちの存在を知っていく。
刃は、自分にできることは人を斬ることだけだと思っていた。
だが、斬ればすべてが救えるわけではない。
斬らなければ、救えない命もある。
「斬っても救えぬ。斬らねば、なお救えぬ。」
阿片をめぐる利権は、野盗や商人、役人たちへと広がり、白家と村を追い詰めていく。
出来上がった不完全な社会の仕組みに、個人や小集団はどう抗うのか。
敗残剣士・霧島刃が、異国で出会った者たちとともに「救う剣」を探す歴史群像アクション。
【主な登場人物】
■霧島刃
西南戦争を生き残った薩摩の剣士。
親友を救えなかった記憶に囚われ、生への執着を失っている。
強大な衝撃を放つ特殊な刀を使うが、その力は自身の身体をも傷つける。
斬ることしかできない自分に苦しみながら、異国の村で戦いに巻き込まれていく。
■白燕華
清国浙江の漁村を守る白家の娘。
普段は穏やかで礼節を重んじるが、白い笑い面を被ると「血の燕」となり、両手の九節鞭で敵を圧倒する。
その仮面と異様な戦い方には、失われた幼い弟の記憶が深く結びついている。
■時雨
新政府軍から刃の暗殺を命じられた女忍び。
冷静で口数が少なく、船中から刃の隙を狙っている。
漂着後も任務を捨てず、刃を監視しながら一行と行動を共にする。
■与那覇蓮
琉球出身の拳法家。
二本の釵を使い、近距離戦を得意とする。
陽気で軽口が多い一方、困っている者を見過ごせない。
考え方も目的も異なる一行の間を取り持つ存在となる。
■国友弥生
亡き父の武器を探して旅をする鍛冶師。
武器の修理、改造、製作に優れ、暗器や爆薬も扱う。
物事を感情より構造と用途から判断する、型破りな職人。
■公孫炎
清朝正規軍の将軍。
白家と燕華に深い因縁を持つ人物。
軍人としての立場を背負いながら、独自の信念に従って行動する。