あらすじ

熊本城下町署の刑事、ベテランの江口と新人の本田は、冷え切った取調室ではなく、 署の片隅にある色褪せたホワイトボードの前に立っていた。 本田が手元の捜査メモをなぞりながら、黒いマーカーを走らせる。 ・身元: 一切不明 (名前、年齢、学歴、職歴、家族構成、すべて白紙) ・公的データ: 抹消 (健康保険証、運転免許証、マイナンバー、不動産登記簿、すべて存在しない) ・唯一の痕跡: 住民票の「転居履歴」のデータのみ ・死因:癌 (WCTC熊本工場の情報セキュリティ対策室から指定された部屋に、男が倒れていると救急へ連絡あり) ※WCTC/World Core Technology Cyber の略 病院に運ばれた時には、すでに心肺停止状態であり、搬送先の医師によって死亡が確認された。 「……まるで、この世に最初からいなかったみたいです」 本田がマーカーのキャップを閉めながら、重いため息をついた。

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カクヨム2026/07/27
  • 現在の作品『亡き男は、雄弁に語る。』