あらすじ
大帝歴二七三八年、冬。
帝国北方、ノルディア伯爵領。雪雲の去った夜に、一人の子が生まれた。
その夜、北辰の東に並ぶ三つの星のうち、最も暗い一つが、あるべき場所から僅かに動いた。城の地下では、誰にも聞き取れぬほど低い音が鳴った。
父はそれを記録に留め、そして封じた。生まれたばかりの子に、意味を背負わせないために。
アーサー・ド・ノルディア。
帝国建国を支えた七大家門のうち、ただ一家だけ伯爵位に留まり、静かに衰えゆく家の嫡男。初代ハルドールが大帝グラディオンへ立てた誓いは、ただ一つだった。
一ー北に立つ。家々の続く限り、北に立ち続ける。十二歳の春、彼は帝都の学院へ送られる。そこで出会うのは、第二皇子ユリウスと、第一皇女アウローラ。
これは、辺境の一伯爵家の年代記ではない。
誓いを負わされて生まれた一人の人間が、その誓いの意味を自分の手で決め直すまでの、生涯の記録である。
※序章のみ、父エルンスト・ド・ノルデイアの視点で語られます。