あらすじ
かつて絶大龍という名の邪な龍がおりました。
彼は、肉欲に溺れ人間の女を娶りました。
彼は女を大変に愛し、自らの持つ癒しの力の全てを貸し与えました。
勇者と呼ばれた男が女を救出する為、龍に挑みましたが、龍はそれを返り討ちにしました。
その後、龍の生活に平穏が戻ると、女は身罷り、男児を授かりました。
男児の名はジークフリート。
ジークフリートは産まれてたったの5年で人間の大人と同等の肉体と知能を得ました。そして、更に5年後ジークフリートは絶大龍を討ち取ってしまいました。
ジークフリートがその亡骸に触れると、
龍の脾臓は、猛り、鎮まることのない雷に、
龍の肺臓は、荒び、淀むことのない風に、
龍の腎臓は、湛え、枯れることのない水に、
龍の肝臓は、盛り、消えることのない火に、
そして龍の心臓は、流れ、留まることのない純粋な力となりました。
自らが引導を渡していながら龍の死を悼んだジークフリートは金匠に龍の五臓を鍛えさせ祭器としました。
ジークフリートはそれらを野道具に三日三晩に渡る葬式を催しました。
ジークフリートがありし日の思い出に暮れ涙を落とすと、五臓を抜かれた龍の亡骸が輝き出しました。そして、ジークフリートは龍の遺志を知りました。なんと、亡骸は瞬きの間に城塞と化したのです。
——魔王国勃興記 第一章 第一節より。