あらすじ
15世紀中ば、ルミエール帝国の王都オルランドでは社交界シーズン真っ盛りであった。
皆華々しく着飾る中、一人のとある淑女はそのドレスの下ではいつもの痛みを堪えていた。
絢爛豪華なシャンデリアが天井で揺れ、甘い香水と上等な絹の擦れ合う音が大広間を満たしている。
煌びやかな笑顔を振りまく貴族たちの喧騒の中で、エレノア・ヴィルディエは背筋を伸ばし、壁際に佇んでいた。
繊細なレースで仕立てられたドレスのすぐ下には、義母たちの気まぐれによって打ち据えられた、生々しいムチの痕が刻まれている。
身動き一つするたびに、硬いコルセットの骨組みが容赦なく傷口を圧迫し、焼けるような激痛が背中を走り抜けた。
しかし、彼女の陶器のような白い肌に身を割くほどの苦痛が浮かび上がることはない。
雪の結晶のように輝く白銀の髪に、ひまわりを思わせる温かな光を宿した黄色と緑の澄んだ瞳。
彼女はまるで痛みなぞ知らぬかのように、唇に優美な笑みを湛えていた。
持参金も持たされず、社交界で「行き遅れの異端者」と蔑まれながらも、彼女が失わないもの――それは子爵家の正当な長女としての気品と、自らの足で未来を切り拓こうとする小さな意地だった。
そして今宵、静かに痛みに耐える彼女のいるその夜会へ、滅多に都に現れないと噂される、かの有名な伯爵が参加するという―――