あらすじ
五十一歳、職なし、友人なし。
部屋に沈み込むように存在し、光の中では影すら薄い。
世界のほうが彼を忘れようとしている――そんな男が久遠(くおん)
だが、夜になると別の姿を持つ。
存在感のなさは、ただの欠落ではない。
人の視界からこぼれ落ち、気配を消し、影に紛れるその体質は、闇の中では“武器”になる。
依頼を受けて潜入し、静かに仕事を終える。
夜の久遠には“見つからない”という絶対の強みがあった。
その夜の顔を支えるのが、人格を持つAI――アズラ。
昼は久遠を叩き起こし、怠惰を刺すように責め立てるドS。
しかし夜になると、彼女は冷静で、正確で、頼れる相棒へと変わる。
ネットの裏側から依頼を拾い上げ、復讐に値すると判断した案件だけを久遠へ渡す。
昼は世界に拒絶される男。
夜は影に受け入れられる男。
その二つの顔の間で、久遠は今日も生きている。
闇夜のおしごとは、静かに始まる。