あらすじ
人類が"魔法"という不思議な力を手にしてから百年。
世界各地では魔術や科学が発展し、魔術師協会の設立によって文明は大きく前進した。
その中心には、世界最高の称号「叡智の賢者」を授かった一人の魔術師がいた。
彼は各国から迎え入れられることを望まれながらも、そのすべてを断り、世界樹の麓――ウトガルド火山「大地の心臓」に築いた大聖堂で、二人の幼い弟子と静かな暮らしを選ぶ。
眠たげな瞳が印象的な少女オタル・ヨイ
太陽のようにまっすぐな少年アサヒ・イル
二人は西の魔術師のもとで魔法を学び、ときには失敗し、ときには笑い合いながら、穏やかな日々を過ごしていた。
朝露に濡れた芝生を駆け回り、薬草を摘み、分厚い魔導書を開き、焼きりんごを頬張る。
食卓にはいつも温かな料理が並び、「ごはんだよ」と呼ぶ優しい声が響く。
それは誰にとっても特別ではない、けれど何よりもかけがえのない毎日。
やがて二人は学童館で新しい友人たちと出会い、魔法だけではなく、人との関わりや喜び、悲しみを知りながら少しずつ成長していく。
これは英雄譚ではない。
家族と呼べる人がいて、帰る場所があって、明日が来ることを疑わなかった、あの優しい日々。
焼きりんごの甘い香りと森を渡る風の中で紡がれる、小さな幸せの積み重ね。
これは、後に世界へ大きな足跡を残すことになる子どもたちの――
"始まり"を描く幻想成長譚である