あらすじ

宮廷魔導技師――王宮工廠に仕える技師の最高位。その登用試験に、王都の下町で三代続く機巧修理店の主、ニクラス・カルデン(二十四歳)が願書を出した。 合格するつもりはない。宮廷技師でありながら下町で果てた祖父の霊前に「試験場の空気を吸ってきた」と報告するだけの、記念受験である。……そのはずだった。 整備実技で彼に割り当てられたのは、受付最後尾の残り物、廃棄寸前の複座訓練機・十三番。仕込みの課題のほかに本物の持病を抱えた、審査官すら見放すハズレ機である。 ニクラスは課題そっちのけで機体まるごとの脈を整えてしまい、想定外の事態に評価は「査定保留」。 そして騎士学院首席、侯爵令嬢フレデリカ・アイゼンガルテンが壇を降り、並み居る学院出のエリートを素通りして、無名の修理屋の前で立ち止まる。 「あなた、後席に乗ってくださる?」 どよめきが会場を覆った――――。 誰も乗り手のいない旧式複座と、誰も選ばれると思わなかった記念受験者。 二人乗りの鋼騎士(シュタールリッター)――正式名称・制式魔導装鎧――が呼び覚ますのは、十五年前に封印された観閲式事故の真実と、祖父の名誉と、彼女の亡き母の機体――。 戦わない、作らない、操縦できない。直す腕と聴く耳だけの男が、王国でいちばん高貴な背中を預かる。 鋼と油と、恋の話である。

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カクヨム
カクヨム2026/07/26
  • 現在の作品記念受験の修理屋、壊れた魔導ロボを直しただけなのに首席令嬢から二人乗りを指名された ~下町の脈聴き修理屋と首席の侯爵令嬢、二人の複座譚~