あらすじ
何百年も、戦争のなかった世界だった。
身体強化の力「気」による豊かさが、人口を際限なく増やし続けた。
だが、土地には限りがあった。
貴族たちは、それぞれのやり方で民を間引いた。
虐殺で。追放で。あるいは、誰にも気づかれぬように。
そうして、この世界は詩や物語の代わりに、戦火を選んだ。
辺境の村に生きる青年ヴィルヘルムは、かつて日本人として生きた記憶を持っている。
戦国の世に憧れながら、誰にも理解されず、家族を持つこともなく死んだ、前世の記憶を。
そして今、彼はこの世界の理から外れた力――予知を宿していた。
血の繋がりも、神々の加護もない。
それでも、彼には視えてしまう。
戦局が。分岐が。まだ起きていない、無数の"あり得たかもしれない今"が。
村を守り抜いたその力に目をつけられ、ヴィルヘルムは貴族バルドゥインの下で従軍することになる。
だが、彼が仕えることになった主君は、内政を顧みず、ただ奪うことしか知らない男だった。
血統ではなく、実力で。
奪うのではなく、守るために。
血に属さぬ予知者が、飢えた世界で玉座を目指す物語。